お茶の可能性を信じて、場所や業界を問わず新しいことに挑戦し続ける人
「大隅のお茶の全て」を表現する大隅茶全について皆様により深く知って頂けるよう、この場をお借りして大隅茶全に関わる人々へのインタビュー内容を皆様にお届けいたします。記念すべき第1回は、私がこの会社に入社するきっかけとなった堀口社長(鹿児島堀口製茶有限会社/和香園株式会社 代表取締役社長)にお話を伺いました。多くの人を惹きつける堀口社長の人柄にも注目してお楽しみください。
-堀口社長と出会って一番驚いたのは、社長の人脈の幅広さ。どのようにお茶業界に限らず幅広い人と出会い、信頼関係を築いているのでしょうか
今でこそオンラインでも講演などを聞くことができますが、コロナ以前は実際に足を運ばないと参加できないイベントがほとんどで、とにかく繋がりたいと思った人には場所を選ばず積極的に会いに行くようにしていました。実際に、堀口製茶では社外人材でありながらCMOであり、大隅茶全では店舗ディレクションを担当してくださった馬渡さん(九州アイランドワーク株式会社 代表取締役社長)と今のような関係を築けたのは彼に会うために渋谷でのトークイベントを見に行ったのがきっかけです。また新しい繋がり方で言えば、副業や兼業といった働き方も提案しています。今まで社内に居なかったような人材を巻き込むことで社内の活性化に繋げるだけでなく、そういう人たち一人一人を堀口製茶やお茶のファンにしたいという思いで取り組んでいます。
-鹿児島県や志布志市の地方創生にも力を入れている堀口社長。地域のために何かをしたいという思いはどこから来るのでしょうか
正直、大学を卒業する頃までは自身が生まれ育った地域がどんな場所なのかあまり知らなかったですし、興味もありませんでした。一度地元を離れてまた志布志市に帰ったのも、たまたま家がお茶農家で帰らないといけない理由があったからです。
しかし、大学卒業後に地元を離れ、その後改めて地元に戻り暮らしてみると、その街にいる人達や街の歴史について感じ方が全く違いました。特に農業をしていると、先人の方達のこれまでの活躍を感じる事が多くあります。私も地域に対して何か貢献できればと自然と思うようになり、お茶を通じて地域を盛り上げることはもちろん、地方創生において地方同士が繋がる新しい形の地域への繋がりにも積極的に挑戦しております。
-お客様のニーズが変化するなかで、どのようにお客様に選ばれるお茶作りをしているのでしょうか
1989年に「鹿児島堀口製茶有限会社」とあわせて小売販売部門の「株式会社和香園」を法人化。それ以降、茶業一貫体制によって茶葉の生産から加工・販売まで全ての工程に関わることで、直接聞くことのできるお客様の声をそれぞれの工程から商品に反映させ、商品の適正な品質に高いこだわりを持ってきました。しかし、当たり前の話ですが、いくら良いお茶を作っても、堀口製茶/和香園そして商品自体を知ってもらう機会を増やしていかないといけないとも強く感じておりました。もっと知ってもらって、そして好きになってもらうための取り組みとして温度感のある情報発信にも力を入れていきたいと考えています。新しく加わってくれる仲間にも頼りながら、茶業一貫体制を活かしたお客様の求める美味しいお茶作りを進めていきたいと思っています。
-すでに和香園にてお茶の販売店があった中で大隅茶全をオープンした理由は何でしょうか?
今の和香園の店舗は50代、60代の女性のお客様に多く来ていただいているのです
が、さらに幅広い世代に手に取ってもらえるよう急須を使わなくても美味しいお茶を飲むことができる「TEAET(ティーエット)」というブランドを2017年に展開し、鹿児島の代表品種を使用したシングルオリジンティー「カクホリ」ブランドを2020年に立ち上げました。そんななかで、玉露以外のお茶は全て作っているという表現をすること、時代の変化に合わせてモノだけでなく体験を売らないといけないことから、新しいお店を作るというのはキービジュアルの一つになるのではないかと考えていました。その時に丁度、お肉と焼酎とお茶をコンセプトにしたホテルを作りたいとお声掛け頂き、馬渡さんや佐野さん(建築家/アーティスト)とのご縁もあり提案していただいてから1週間のうちに今の「大隅茶全」のオープンが決まりました。
-大隅茶全の空間を作っていく中で、堀口社長がこだわったところはどこでしょうか?また、大隅茶全を今後どのような場所にしていきたいですか
昔から繋がっているお茶の文脈を、今だったら、堀口製茶だったらこう表現するという自分がやりたいことを詰め込んだ中身になっています。もちろん佐野さんからの提案を元にではありますが、最終的には椅子などの家具も全て私が決めているので、自分としても良い経験をさせて頂きました。今は大隅茶全のために都城まで足を運んでくださるような、お茶に関して感度の高いお客様に多く来ていただいているので、お茶を知らない人でも地元を歩いていてフラッと足を運びたくなるような場所にもしていけたらいいなと思っています。
-最後に堀口社長が好きなお茶と楽しみ方について教えてください
私が子供の頃、目の前で祖父と父親が色々と話合いながら作っていた「ウーロン紅茶」には特に思い入れがあります。商品として世に出た時、ウーロン紅茶という概念は緑茶が主流だった当時には早すぎたようで残念ながら販売終了になりました。しかし、その商品のパッケージを資材倉庫でたまたま発見し、冷たくしても自然な甘さを味わえるその味が強烈に記憶によみがえり、もう一度、復刻させた商品です。
朝1人の時間に緑茶を入れて飲むのですが、気分を変えたいときにウーロン紅茶を飲んで急須に残っている茶葉の香りを嗅ぐと、「これこれ!」という気持ちになります。香りが立つので熱湯で飲むのがおすすめで、柔らかい甘さと優しい香りが特徴です。妻も起きてきた時は、お互いにお茶を入れ合う穏やかな時間を過ごしています。新しいお茶の楽しみ方としては、あらびき茶をビールに混ぜて「あらびき茶ビール」を作るのにハマっています。ビールが飲みやすくなって意外と合うと周りからも大好評です。
行動力があり新しいことにも積極的に挑戦する堀口社長。意外にもご自身のメンタルを「豆腐」に例える社長ですが、その繊細さもまた多くの人に愛される理由の一つ。今年75周年を迎える堀口製茶ですが、「100周年を迎える頃には世界中で飲まれ、美味しいと思われているお茶が堀口製茶のお茶であって欲しい。今年がそのための1年目だと思っています」と語っていただきました。ただ世界に向けてお茶を届けるだけでなく、美味しいと思ってもらえる品質の高いお茶を追求し続ける。そんな堀口製茶/和香園の今後の挑戦も楽しみにしていてください!
今回堀口社長について皆さんに紹介するにあたって、堀口製茶や大隅茶全だけでなく、堀口社長の人柄についてもお伝えできればと思いながら記事を書いたのですが、伝わりましたでしょうか?
記念すべき1つ目の記事ということで気合を入れていたのですが、なんと当初1時間を予定していたところを2時間堀口社長にお付き合いいただきました(笑)お茶のファンを増やせるよう頑張りますので今後の記事もお楽しみに!
鹿児島堀口製茶有限会社
広報 橋本小波